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今週の円谷劇場



ウルトラQ 17話「1/8計画」

人間を文字通り1/8のサイズに縮小し、専用のコミュニティで生活させる1/8計画。
限られた空間を現在の何十倍も活用でき、食糧問題も解決するといわれています。
嘘か誠か、先進国ではたいていやっていることなのだそうな。

これに望まぬ形で組み込まれた由利子が体験したのは、まさしく何もかもが縮んだ世界。
小さな箱の中に収まる小美人サイズの彼女と、通常サイズの人々との合成が巧みです。
本編の見どころのひとつは、この気合の入った特撮でしょう。これはまあ、毎回そうですけど。

最終的に物語は夢オチみたいな形で幕を降ろすんですが、実際にいろいろおかしい部分があります。
1/8計画特区への編入が強引すぎますし、いつのまにか7日も経っていたり、万城目の態度が極端だったり。
日数経過にしても万城目の態度にしてもこじつけられる範囲ではあるんですけど、不自然なのは確かです。

そして、最後の最後でまたひと捻り効いたオチがつけられてました。
遥かな古代、現代科学をもってしても建設が至難とされる数々の巨大建築物が威容を競った巨石文明。
そこに生きていた人々が身の丈20mにも迫る巨人だったのではないかという説は、今なお語られるものです。
巨人たちの膂力を合わせれば、あるいは大石をも動かせたはず──そんな妙な説得力が理由でしょうか。

ではなぜ、今の我々はせいぜい2m程度の身長なのか。何者かによって縮められたからなのでは──
ロマン溢れながらもトンデモ極まりないその言葉で、本編は幕を降ろしています。
今こうして生きている世の中が、以前は全く違っていたのではないかというある種の恐怖にも繋がる説ですね。

今回はなんといっても、1/8に分割された画面へ次々とカットが繋がっていくOPシーンが白眉でしょう。
現在の目でみても見事と唸らされる構成です。アナログでやるしかない時代に、どうやって撮ってたのかなあ。



怪奇大作戦 5話「死神の子守唄」

不吉にもほどがあるタイトルです。

女性が次から次へと、一瞬のうちに凍らされて殺されるという殺人事件。
そこに大量の放射能を検知したSRIは、スペクトルG線が使用されたのではないかという疑いを抱きます。
死体から得られた数々の情報から、それはほぼ確信へと変わっていきました。

スペクトルG線はいわゆる放射線治療にも使えるみたいですが、そのためには膨大なエネルギーが必要。
なんでも原爆以上のそれが要りようとのことで、研究が諦められていた分野のひとつだそうです。
ところがこれを逆に、低温によって得ることができたら──という発想の転換のが本編のキモのひとつ。

これを実践したのが、本編のヒロインである高木京子(本名:吉野京子)の兄にあたる吉野貞夫です。
まさに天才といえますが、貞夫は未完成のこの技術で人体実験を繰り返していました。
すべては、原爆病をかかえた妹を救うため。京子はまだ母親のお腹の中にいたころ、広島において
胎内被爆に遭ってしまうという悲惨な生い立ちを背負っていたのです。

妹を救うために、罪もない女性たちを片っ端から人体実験の標的として惨死へ追い込んでゆく貞夫。
まさに悪魔へ魂を売った所業ですが、私心が全く無いだけにどこか物悲しさがあります。
牧がわざわざ説得をしようとする場面があるのは、彼もまたどことなく歪んでいるからでしょうか。
決して口では言いませんでしたが、間違っていると認識はしつつも心情は理解してるような。
ならば妹に罪があるというのか、という貞夫の問いかけには牧だけでなく、誰も答えられないでしょう。

結局貞夫は機動隊にしょっぴかれ、兄の罪と己の未来を悲観した京子は凶器の冷凍銃で自殺。
貞夫にとっては最悪の結末です。こうなるくらいだったら死を選んでいたであろうほどの。
しかし別の方向から見れば、連続猟奇殺人事件の犯人が捕らえられたということ。
これによって大勢の女性、そして彼女たちを血縁に持つ多くの兄弟たちも胸を撫で下ろしたことでしょう。

前回に続いての、実相寺監督担当作品。前回ほどじゃありませんが、もろにそれとわかるカットもあります。
この前が焼死なら今回は冷凍死というわけですが、前回が欲ならば今回は愛情が犯人の動機。
どのような感情であっても、それによって人は狂気に走りうるということなのかもしれません。
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大山シュウ

Author:大山シュウ
更新記録や徒然、雑多感想などよしなに上げていきます。

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