デジモンクロスウォーズ#54「栄光のデジクロス、つかめ! オレたちの未来!」



★あらすじ

 その日、空を黄金の光が覆った。

 ついに最後の戦いへ挑むクロスハート連合軍。
 デジメモリの勇者、そして戦う決意を固めたユウの協力を得て軍団を越えたデジクロスが次々と乱舞し、
 なおも山と湧いてくるバグラ軍の手先を蹴散らしてゆきます。しかし、それは言わば陽動でした。
 タイキの真の狙いはデジメモリの力でダークストーンに突入し、要であるシャウトモンのデータを見つけることだったのです。

 ところが、己の中にさえ意識を実体化できるバグラモンがその前に立ちはだかりました。生身ではどうにもなりません。
 仲間たちも次第にピンチへと陥り、もはやこれまでかと思われた時、タイキの呼ぶ声を聞いたシャウトモンが現れました。
 さらには同じく死んだはずのベルゼブモンまでもが駆けつけます。理由はコードクラウンでした。
 ダークネスバグラモンを拒むタイキの意志に応え、新たに彼を主として選んだのです。

 この事態を受け、倒れていったデッカードラモンたちも復活。
 コードクラウンの導きで、シャウトモンを中心に凄まじい数のデジモンたちがデジクロスを果たしてゆきます。
 未来のため、すべての存在が秘める可能性のため、シャウトモンX7・スペリオルモードがその姿を現しました。
 願いそのものを背負ったとも言える一撃の前に、さしものダークネスバグラモンもついにその野望を砕かれ、倒れます。
 シャウトモンはバグラモンの存在さえも可能性として背負い、未来のキングとして大きな一歩を踏み出したのでした。

 タイキたちの長く短い夏は、こうして終わりを告げたのです。
 そして、一年後──
 


★全体印象

 54話です。ついに最終話…と思ったら、話数は継続なんだそうで。
 脚本は当然のように三条氏。演出と作画にもそれぞれSDとキャラデザが来ており、力の入り具合がわかります。
 浅沼氏が作監にクレジットされたのは大変久々のことで、クロスウォーズでは初めて。

 一年三ヶ月。話数としては01と同じですが、この長い戦いもようやくひと区切りです。
 上の通りクロスウォーズとしてはまだ続きますけど、あれだけ刷新されると事実上の新作といっていいでしょう。
 一話から続いてきた物語としては、やはりこれが最終話ということで良いと思います。

 その顛末はというと、やっぱり元気玉デジクロスでした。前回どころか、だいぶ前から予想してた通りです。
 しかしこれまでの段階でバグラモンの思想を描き、タイキとシャウトモンがそれを止めてさらに乗り越える王道の図式や
 拾うべきネタの大半を丁寧に拾って繋げてゆく展開など、仕上がりに手抜きは窺えません。
 強いて挙げれば、ダークネスバグラモンがあまりにあっけなく倒されたことぐらいでしょうか。せめてあと一分。

 とりあえず、以下でアレコレと語ってゆきましょう。



★各キャラ&みどころ


・タイキ

 最初っから最後まで本当にブレない男でした。
 サブ脚本が色々とアレ過ぎる時でさえ安定していたというのは、生半可な立ち具合じゃありません。
 主人公として、一本揺るぎない柱を持っていた証拠です。彼とシャウトモンがいたからお話を引っ張れたのでしょう。
 三条作品は大抵がそうです。鬼太郎も主人公の存在感が非常に強い作品なので、作風には合っていたのかも。

 その分、安定しすぎてていささか面白味がないという意見もチラホラ。
 実際その天然気味を活かしてギャグができる側面や、最後の最後に期待へ応えられなかったからと一瞬ヘタレた場面すら
 彼の完璧超人ぶりを助長するものでしかなかったかもしれません。

 自分ではああ言ってましたけど、控えめに見ても精神力とリーダー力において歴代主人公トップクラスじゃないでしょうか。
 なんせ自身の未熟や感情の暴走を原因とした失態がほぼありません。あり得ないぐらい無い。
 決してピンチにならないわけじゃなく、むしろピンチばっかりなんですが、全て撥ね返して成功へ繋げてます。
 明確にしくじったと言えるのは45話のアレぐらいで、しかも速攻で謝っていました。誰ひとり責めませんでしたが。

 これはその人間味で愛されるよう立てられているわけではなく、やっぱりヒーローとして造形されているからでしょう。
 そういう意味ではシリーズ中「普通の少年」としての要素が最も少ない人物と言えるのかもしれません。
 過剰に好かれも嫌われもしないタイプなので、時として良い意味で空気になりますけど。

 彼なら新世代であるタギルを食い過ぎることもなく、上手いぐあいに立ててあげられそうな気がしますね。
 物語の方針やタギルの性格タイプにもよりますが。


・シャウトモン

 そんなタイキの言わば人間的側面を背負っていたかもしれない漢。
 メインキャラとしてはタイキの思想をいちばん最初に受け止めた存在ですし、失敗や悩みも結構ありました。
 決して器用なタイプじゃないので、うまく考えを伝えられずに感情で突っ走ったこともあります。

 また人外ということを利用し、タイキではできない体を張っての活躍や啖呵切りが非常に目立ちました。
 誰もがやり直せる世界をキングという表現を用い、タイキに代わって何度となく語り、体現してきたのです。
 タイキがクロスハートの絆なら、彼はクロスハートの要でした。

 だから彼の消滅とともにタイキが膝を落としてしまったのも、その言葉を思い出して絶望に抗おうとしたのも、
 彼さえいればとダークストーンに突入していったのも別におかしくありません。
 シャウトモン無しのタイキはあり得ないし、タイキなしのクロスハートもあり得ないからです。

 ゆえに、クロスハートはその役割を終えて自然消滅してゆくのでしょう。
 タイキとシャウトモン、この二人が一時とはいえ別れる以上、もはや皆がそこに集まる理由もないのですから。


・アカリ

 タイキの嫁。最終話のヒロイン復帰ぶりが鮮やかだったので、敢えて三番目に置きました。
 彼女はタイキに最も近い世話女房として、またゼンジロウと並ぶ一般人代表として明確な役割を背負った人物です。
 彼女たちがいるからタイキが際立つし、その人間味も補足してあげられていました。

 ギャグ調且つ最終的に丸め込まれるとはいえ、タイキを正面切って怒れるのは彼女ぐらいのもんでしょう。
 キリハやネネだとああはいきません。なので、デスジェネラル篇はハデでありつつそこいらが足りない感じでした。
 タイキもそのヒーロー性がどんどん際立つばかりで、ブレーキをかけてくれるものが無かった印象もあります。
 ユウへの説得が少々梃子摺ってしまったのも、その辺に原因がありそうな気がしてきました。

 なんにせよ、タイキを救うために長物一本で立ち向かう彼女はとても輝いていたと思います。
 力を持たず、ジェネラルでさえない人間が勇気をもって大魔王に楯突く。それこそ、タイキには絶対できないことです。

 予想したことはありますが、彼女たちがクロスローダーを得なくて少しホッとしました。そうじゃないといけない。


・ゼンジロウ

 一般人担当その2にしてムードメーカー兼ギャグメーカー。
 最終話での見せ場はアカリに比べると少ないのですが、彼に代わるポジションの人物はとうとう現れませんでした。
 つまり、それだけ代えのきかない役割だったことになります。

 時間移動と路線変更にあたり、たぶん真っ先に槍玉へ挙げられたのがこのゼンジロウとアカリの存在です。
 パッと見、デジモン同士のバトルを主体にしたいなら彼らはいなくてもいいのかもしれません。
 それに二人がいなくなったことでタイキの孤立感が一時的に強まり、シリアス寄りへ振りやすかった面もあるでしょう。
 D5にあたって、人間界からの視点が得られたこともそれなりに大きかったと思います。

 それでも53話で二人が現れたとき、タイキが思わず二人に抱きついたとき、改めて思いました。
 キリハやネネでは与えてあげられないものを、アカリとゼンジロウは持っている。タイキは一瞬それに甘えたのだと。
 そう、甘えられる誰かがずっといなかったのです。だから、タイキはよりヒーローになるしかなかった。
 主人公としての地力で乗り切ってはいましたが。

 もし彼やアカリがデスジェネラル篇でも同行していたら、どうなっていたか興味の尽きないところです。
 絡みを作ることで、特にネネが得してたと思うんですよね。少なくともこれは間違いありません。
 あの珍奇な七変化を見て、ゼンジロウがどう思うかはさておくとしても。

 三条氏は二人の存在とそのリストラによほど思うところがあるのか、意地でも拾おうと努力していました。
 でなけりゃ、あの土壇場でアカリに出番なんてあげないと思います。
 

・キリハ

 実は大魔殿篇の見せ場がバグラモンとの問答しか無かったかもしれない人。
 ネネよりはマシですが、ここまで安定してくるとアカリやゼンジロウに持ってかれる部分が結構多いです。
 爽やかに語りかけて、二人に「…えーと、どちら様?」と怪訝な顔をされるあたりが最終話のピークかも。

 そうは言っても、タイキがいない間戦線を支える副将としての役割の大きさに変わりはありません。
 ブライトランド篇以降の仕事は実際確かなもので、無茶をしながらも確実に勝利へと貢献してゆきました。
 確変するとここまで凄いのか、その才がバグラモンの見抜いた通りだったのか、またはその両方か。
 何かに固執すればするほど空回ってうまくいかないと書くと、なんだか親しみが湧いてきます。

 良くも悪くも人間味があり、迷いや悩みも一番多かったゆえ、経過の杜撰さが非常に残念な人物でした。
 あのへんがあんな出来じゃなかったら、デスジェネラル篇はさらに好評価を貰えていたと思います。
 何であんな重要パートをよりによって米やんに書かせたのでしょう。それもたぶん、ろくな指示もなしに。

 ここは構成上、最大の失敗だと思います。問題が明確なだけに、どうにかならんかったのか感が強いですね。
 あの後の大半を構成自身が書いてるところからみて、明らかに手が足りてなかったのでしょうが。


・ネネ

 お役目終了感がちょっと酷なぐらい強かった人。
 ユウとの再会があっさり流された上、この最終話ではその弟に食われまくって影が薄いこと薄いこと。
 あげくの果てにはアカリにまでヒロインポジションを奪回され、実は散々な顛末を迎えていると思います。

 何故こうなったかと言えば、彼女には「ユウを取り戻す」という目的以上のものが無かったからでしょう。
 つまり最初っから、弟さえ取り戻せればそれが彼女の望む世界でした。タイキの考えと方向が合っただけ。
 はからずも「ユウの代替」である事を自ら証明していたのです。
 クロスローダーの色は目的を果たすまで諦めぬ「希望」を秘めたものだと認識してはいるのですけれど。

 ユウがどこにいるかわからず、ダークナイトモンに従うしかなかった頃は陰が目立ったんですが、
 デスジェネラル篇以降それがほとんど無くなったのもかえって良くなかったかもしれません。
 ユウが現れて以降は普通の戦うお姉さん、且つお色気担当しかやる事が残ってなかった感じです。
 モニタモンとの連携で潜入行動もこなしてたんですが、その成功率も低下の一途を辿っていました。

 彼女に限らず、三条氏は世話女房と悪女以外の女性キャラを活躍させるのが苦手という弱点があります。
 悪女じゃなくなったネネは、氏にとってはユウ絡み以外じゃ描きにくい人物なのかもしれません。
 そこを吉田玲子女史にもうちょっと補ってもらえれば良かったんですが……
 しかも困ったことに、ハニーランド篇はどうもそれ程評価の高いエピソードじゃないみたいですね。

 富田氏を筆頭に、作画陣にはとにかく愛された人物です。
 ミニスカへの転向は、どう考えてもスタッフの趣味でしょう。そこは素晴らしかった。紳士的な意味で。
 よもやそれしか話題の無い人になってゆくとは、思ってもみませんでしたが……
 せめてアカリがいれば、コンビを組んだり女の子らしいところをもっと出したりできたでしょうに。

 中の人である桑島氏自身はメインキャラ格で続投するそうなので、とりあえずそちらに期待しましょう。
 
 
・ユウ

 ついに一念発起してダークネスローダーを浄化し、クロスローダーを入手。正式なジェネラルとなりました。
 途端に軍団を越えたデジクロスまで発動させ、大活躍しています。最終話とはいえ半端じゃねえ。
 そのおかげでネネが空気もいいとこな存在になってしまいましたが……

 今に始まったことではありません。ブライトランド篇以降は第四のジェネラルとして台頭著しいものがあります。
 その中で増長し、転落し、悩み、苦しみ、励まされ、乗り越えてきました。
 私としてはネネともう少し密度のあるドラマを演じてくれるかと思ったんですが、あいにく然程でもなし。
 彼個人としてはともかく、ネネと昔どんな姉弟だったのかは37話の描写以上のものが出てきませんでした。
 場合によっては濃い話になりそうだっただけに、いささか残念。

 ダークネスローダーからの浄化で現れた自分の色は、黄金でした。別の何かを一瞬連想しましたが黄金です。
 エグザモンの評では「決意の色」だそうなのですが、次回以降では知識を活かしてタイキを支えるとあるので
 実は「知識」がその心の色だったりするのでしょうか。ワイズモンが抜けそうな分の穴埋めとか。

 それにしても、新主役チームの一員として続投とは。
 後半から出てきた人物としては、まさに出世頭といえるでしょう。ダメモンはもっと意外でしたけど。
 そのダメモンとどのように再会を果たすのか、描かれているといいんですが……
 タギルの紹介もあるし、無いか最小限にとどめられそうな気がしますね。


・クロスハートの仲間たち

 最終話なのをいいことに、デジクロスの大盤振る舞いで大乱闘。
 サイバードラモン+ドラコモンに始まりガオスモン+ポーンチェスモンズ、ジジモン+カメモン+ゴーレモン、
 ナイトモン+ワイズモンと今までなんでやらんかったんじゃいと言いたくなる大進撃を見せてくれました。
 たぶんあの時点じゃなきゃできなかった+半分はユウの発想なのでしょうけれど。
 さりげにバリバステモンも再々登場した上、アルティメットスピーカーを使っていたりします。

 これだけに留まらず、今までほぼいるだけだったリリモンやモニモンにまで短いながら見せ場がありました。
 特にリリモンは持ち前の敏捷性でバルブモンを翻弄し、最初で最後のフラウカノンとボムモンとの連携で
 華麗に魅せてくれています。初代主役妖精型のまさに面目躍如でした。かっこええー。
 …ってか、こんなに強かったんかい君。今回はただの村娘だと思って嘗めてましたよ。

 復活組としてはベルゼブモンがあっさりと颯爽と再登場。シャウトモンとともにタイキの危機を救いました。
 二人が体と心を取り戻せたのはコードクラウンがタイキを選んだ事実がもっとも大きな理由なのでしょうが、
 それもタイキがダークストーンに突入するという荒業をやってのけたから起きたことなのだと思います。
 無謀と思われる一歩を常に絆と未来へ繋げてゆく。それがタイキであり、クロスハートなのですから。

 他にもデッカードラモンやアポロモン、オレーグモンらが大挙して復活し、一斉攻撃する場面があります。
 一話限りとはいえ、これだけの戦力が結集した主人公チームは他に類をみないでしょう。
 全ては、たったひとりの少年とそのパートナーとの出逢いから始まったことなのです。


・デジメモリの勇者たち

 エグザモンらが何故今になって現れたのかも、きっちり説明されています。
 タクティモンが次元の狭間を通って人間界にやって来たとき、その体に引っ掛かってたんですね。
 彼らがすぐに動けていれば、アカリとゼンジロウも同行できたかもしれないというわけか…
 タクティモンは敵にも味方にも恩恵を残して逝ったようですね。なんだかんだでキーキャラの一人ですな。

 これで物語上はデジメモリが全部揃ったことになり、しかもコードクラウンの奪還によって全員が復活。
 ラスボス以外の誰と戦うんだよというぐらいの豪華メンバーが肩をならべることになりました。
 タイキの見た夢は、どうやらこのときの暗示みたいですね。細部が違い過ぎるのはご愛嬌。


・デジタルワールドのみなさん

 コードクラウンの呼びかけに応えてか、最後のデジクロスの際に大挙して現れました。
 これにはさすがのバグラモンも「…おいおい、マジかよ」と言わんばかりの顔。戦いはやっぱり数だよ、兄貴。

 バックに流れてる大半は設定画まんまのものばかりですが、これまでのシリーズに出たデジモンはほとんど来てます。
 目につくのはロップモン(たぶんヴァンパイアランドの彼)にアイスデビモン、ライラモン、スティングモン、
 シャッコウモン、スパーダモン、コロナモン、ルナモン、レオモン、ピノッキモン、イグニートモン、
 メルキューレモンなどといった過去の敵とゲストたちです。レオモンはマッドレオモンから元に戻った彼でしょうね。

 デジタルワールドに還る時にはマタドゥルモン、ワルもんざえモン、マルスモン、マーメイモン、デスメラモン、
 シュリモンなど、元バグラ軍のみなさんが多数を占めた内訳となっています。
 なぜかパンプモンもやたら目立ってましたが、こっちはモブとしてしか出てなかったような……


・シャウトモンX7スペリオルモード

 コードクラウンの奪還により、初めて可能になった最終最後のデジクロス。別名、天元突破シャウトモンです。
 黄金に光り輝く巨体は合体要員全員が超進化したかのごとくな神々しさ。うーん、グリッターですな。
 あの場に現れたダークネスバグラモン以外の全てを取り込んでるので、もはや合体数をカウントするのは諦めました。

 しかしそれは、あくまでもデジモンたちの意志によって行われたものです。
 これまでタイキたちが助けてきた大勢の住民たちやかつての敵に至るまで、心ある者は集えと
 コードクラウンの声を聞き、駆けつけたであろう結果なのですから。クロスハートと連合軍の足跡もそのまま体現してます。
 タイキたちの戦いひとつひとつが、実はバグラモンを倒すカギだったのですね。さすがの大魔王も予想しなかったことです。

 デジタルワールドの意志そのものを背負ったとも言える一撃はあまりにも、あまりにも重いものでした。
 そうしなければならぬほど、ダークネスバグラモンの存在は世界のバランスを乱すものだったのかもしれません。


・ダークネスバグラモン

 たったひとりで、文字通り世界を敵に回した男。
 あれだけの顔ぶれを前にしてもなお勝てるつもりでいるあたり、どんだけ強いんだよと思わされてなりません。
 弟ひとりを取り込んだだけで充分すぎるほど強くなってますしね。もっとも弟が残したのは力だけですけど。

 とどのつまり、彼はひとりだけで強くなりすぎたのかもしれません。
 絆も自由も意志も否定し、ただ己の思うがままに隷属せよと言い切り、正しいと信じて疑わぬ極大のエゴ。
 それがこの大魔王でした。本来、それは世の中をより良いものにしようという願いから始まったのかもしれません。

 でも秀で過ぎていて一人で何でもできる彼は、全部自分のものにすれば全てうまくいくのだと思ってしまった。
 今の世の中には良いものも悪いものもあって、だけどそれが未来への意志になってゆくのに、それを摘もうとした。
 半身を焼かれ、天から追放されたというプロフィールも慢心と野望を見抜かれたがゆえのことでしょう。
 ダークストーンを手に入れた暁には、どこかにあるかもしれないその「天」にも攻め入る気だったのでしょうね。

 が、結局世界や人々が彼を選ぶことはありませんでした。
 バグラ軍にいた者たちでさえ、最後には掌を返した。彼は世界に否定され、歪みすぎたその自我も押し潰されたのです。
 そして同時に赦されました。今度は。一人で何でもやるなんて寂しいことを言わないで済むように。
 なぜ否定されたのか、次はきっと答えを掴めるように。

 それでも挑戦を再び野心へ向けた時は、再びシャウトモンとその仲間たちが成敗に向かうのでしょう。
 今は駄目でも、いつかはきっと。バグラモンが自分に何が足りなかったのか、悟るその日まで。


・バグラ軍のみなさん

 どこから現れたのか、バグラモンが大量に放ってきました。デジクロス無双と復活祭りの的みたいなもんですが。
 顔ぶれは一話の夢とよく似てますが、上に書いたようにバルブモンなんかも混じってます。


・コードクラウン

 タイキが到達するやあっさりとバグラモンの手を離れ、本来の姿に戻りました。
 闇の力でダークストーンとなっていたことなど無かったかのようです。変質していたと思われたのは表面だけで、
 新しい持ち主さえ現れれば簡単にもとに戻ってしまうのでしょうか。ある意味御しがたいな。

 私としては、コードクラウンは最初からタイキを選んでいたんじゃないかと愚考するに至りました。
 バグラモンという平気で世界を飛び越え、あらゆる次元の覇者たらんとする歪みを修正し、あるがままの世界に戻すため
 人間の力を借りようと思い至り、オメガモンにクロスローダーの作り方を教えていたとしか思えません。
 でも中途でバグラモンに奪われてしまい、ダークストーンとしてその力を利用されてしまっていたと。

 一話のあの夢は、ひょっとするとコードクラウンの仕業かもしれませんね。あれの力なら充分可能なことでしょう。
 内容が混乱しているとはいえ予知夢に近いのも、未来さえある程度予測できる力があると考えれば不思議じゃないですし。
 つまり早く来て私を完全にし、その力でデジタルワールドを修復してくれと呼びかけていたのではないでしょうか。
 デジタルワールド分裂の原因はやはり人間にもあったので、ならば人間なら修正することもできるはずだと。

 というわけで「真のヒロインはコードクラウン」説をぶち上げたいと思います(えー)。
 いや、だってついさっき気づいたけど境遇がまるっきり囚われのヒロインなんですもん…力を利用されたりするし……


・バコモン

 公募デジモン最後の一体。段ボール箱を人型に繋げたような姿をしてます。
 デジモンとしてはこれまた個性的なもの。個人的には四体ともなかなか良かったですね。
 神話モチーフやロイヤルナイツといったカッコいいのもいいけど、こういう連中もいてこそのデジモンでしょう。


・ここまでの総合

 放送局の移動、休止の連発、時間帯移動、路線変更、メインキャラの長期離脱と波乱だらけの作品でした。
 一年ちょいの間にこれだけの苦難に見舞われた番組も珍しいと思います。…挙げてみると本当にいろいろあったな。
 そのわりに然程話題にならなかったのが悲しいですが。

 それでも何とか着地できたのは、ひとえに構成はじめスタッフの努力でしょう。心から頭が下がります。
 ハンター篇からはどうも大きな賭けというか、世の中の流れに便乗するようなことを始めるっぽいのですが
 来年の四月であの枠に入ってからちょうど一年となることもあり、半年だけかもしれませんね。

 いずれにしても、まずはハンター篇を楽しみにしておくとしますか。
 別物になったらなったで、それはそれなりに楽しめるでしょう。スタッフが一緒なら尚更。




★名(迷)セリフ


「礼を言う、アカリ。ゲンゴロウ」(キリハ)

 ほぼ初めて二人の名前を呼んだ記念に。ゼンジロウの方をきっちり間違えてるのはお約束。直後にリアクションが飛んできます。
 アカリたちの「…誰?」ってぐらい意外そうな顔も印象的。


「「ほっとけない!」」(タイキ以外の全員)
「…だろ?」(キリハ)


 タイキのお株を奪いつつ、鼓舞して送り出す場面です。キリハとネネの表情がお茶目。
 お約束ではありますが、これまでの締めにふさわしいやり取りでした。タイキの人物が立っていたのでさらに活きる。


「だって…独りで行くタイキがほっとけないって思ったの…」(アカリ)

 まさかの任意同行。貴方とならばどこまでもと言う感じに、最後の最後で華麗にヒロインの座を奪回しました。
 ジェネラルの嫁、いまだ健在なりです。やっぱりタイキにはアカリとがしっくり来ますね。
 キリハやネネとどんなに絆を結んでも、この役割だけはアカリにしかできないでしょう。

 ところで救護班連れてきてるんですけど。まあ、どっちの方に必要なのかは微妙な判断ですが。


「違うっ…! 人間もデジモンも自由な心を持った生き物だっ!
 人間だけじゃない! 花も鳥も魚も虫も、生き物すべてが自由に生きる権利を持っているっ!
 お前が好きにしていいはずがないッ!!」(タイキ)


 バグラモンに何故不完全な世界に固執するのか、と言われて。
 あるいはバグラモンの言う通り、生まれ変わった人間は誰もが全てにおいて高い能力を得、必ず成功するのかもしれません。
 けれど、そこに夢はあるのでしょうか。意志は。愛は。または、その全てがバグラモンに操作されたものだとしたら?
 やはり、それはどこか歪んでいるのだと思います。人は支配という言葉で表現するでしょう。

 誰かの手で歪められ、都合のいいように弄られたものを「これがあなたの唯一の未来です」と手渡す。
 戦っても無駄だと、生まれる前からの運命が無駄だと言うと、皆が知って生きていかねばならない世界。

 それが是とされる世界を、人はさらにこう呼ぶのです。地獄、と。


「お前…よかった……よかった…!」(メルヴァモン)

 シャウトモンとともに帰還したベルゼブモンを押し倒して。彼女がここまでボロ泣きするのは非常に珍しいことです。
 いつのまにか構成のイチオシとなっていたこの組み合わせも、どうやらハッピーエンドに終わりそうですね。
 涙の描き方がちょっと生々しいです。


「オレはっ! 未来の…デジモンキングだぁあぁぁっ!!!」(シャウトモン)

 未来への咆哮。応えるように、世界の意志が奔流となって王の背へ流れ込んでゆきます。
 そう、世界はひとつ。オレたちもひとつ。スペリオル登場時に聞こえる歌詞は、まさにこの演出のためのものでしょう。


「我が理想と…信…念……」(ダークネスバグラモン)

 すべてを超越したスペリオルモードに敗れ、恐らくデジタルワールド時間にして数万年ぶりに両膝を突いての今際。
 すべてを敵に回してまで邁進してきた覇道の行き先は、挫折と破滅でした。すべてを一人でやろうとしたがゆえに、
 隷属させようとした者たち皆に刃を向けられたのです。あまりにもあっけない最期でした。

 スペリオルモードに致命傷を受けたときの「……え? あれ? オレ死ぬの?」と言わんばかりの表情が印象的でした。
 刺されるまで、負けるとは微塵も思ってなかったんだろうなぁ……それこそが彼の命取りでしたか。


「……バグラモン。またお前が間違ったら止めてやるよ。いつかきっと、オレの国で会おうな…」(シャウトモンX7S)

 死を迎えた闇の魔王へ捧げる、最大限の敬意。
 今回はこんなことになってしまったけど、バグラモンほどの男ならきっといつか理解ってくれる。
 そしていつかはその大きな力を、皆の努力で掴み取る未来への助けとして使ってくれると。

 この瞬間、シャウトモンは力だけでなく王としてもバグラモンを越えたのだろうと思いました。
 でもそれはシャウトモンとコードクラウンの呼びかけに応え、ここに結集した意志が成し遂げたものなのです。

 それを為すことができるものこそ、キングの名にふさわしいのでしょう。


「戦いは終わった……
 世界に平和が訪れ、オレたちの熱い夏は終わった。
 またきっと夏はやってくるけれど…それは、別のお話」(タイキ)


 次があるからなのか、あっさり目の爽やかな別れでした。
 まあ、涙のないカラッとした別離というのも彼ららしいかもしれません。二度と逢えないなんて誰も明言してないですし。
 それにしても、デジモンに夏というのはすっかり枕詞となった感がありますねえ。あれからもう12年か……

 年を取るわけだわ。タハハ。



★次回予告

 息つく間もなく新展開です。最大の目玉は新たなるジェネラル、明石タギルの存在。
中の人である井上麻里奈氏は少女役の印象が強いようでいて少年役の経験も豊富なので、心配はいらないでしょう。
新パートナー・ガムドラモンにも注目したいところですね。
プロフィール

大山シュウ

Author:大山シュウ
更新記録や徒然、雑多感想などよしなに上げていきます。

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